ハンコ文化と日本人・印鑑まめ知識

印鑑とサイン、どっちが優れているのか

 印鑑とサイン、どちらが優れているのか良く論じられるテーマの一つでもありますね。どちらにもやはりメリットとデメリットがありますから、比較してみましょう。

 どちらが簡単かといえば、間違いなくサインです。筆記用具があれば、印鑑もサインも持って歩く必要がありません。
 サインのメリットは、印鑑のように保管する必要がないため、手軽でもあるという点です。印鑑のように、「物」ではないということは、銀行印と通帳を一緒に盗まれてしまい、お金が引き出されたという事故もありません。実印が必要になった場合、印鑑登録して印鑑証明を貰って……という煩わしさがありません。
 それではどちらが安心か考えてみましょう。最近は機械彫りの精度が上がり、印影があればかなり本物に近いものが彫れます。落としたり、人に渡してしまったり、騙されたりがなくとも偽造を完全には防ぐことはできません。ですが実印が必要な場合は、必ず署名と印鑑証明が必要になります。面倒ですが、これらがそろっていなければ本物の意思による、本物の印影かは断言できません。
 ではサインはどうでしょう。印鑑がなくてもサインをまねる事ができれば、契約できることになりますよね。サインの場合、よほどの偶然がないかぎり、本人であっても全く同じものはかけません。筆跡や癖などから本人であると推察するわけですから、まったく同じものである必要がないサインは、偽造しやすい事になります。
 また、長く生きていると、字体が変化してしまう事があります。アルファベットでもこの問題はありますから、漢字の署名の場合はもっと変化しやすいのです。自分の書く文字にコンプレックスがある人は、故意に字を変える事もありますし、その時の心理状態でも多少字体は変わります。
 サインも印鑑も完全ではないのなら、手軽なサインの方に軍配が上がる事になるかもしれません。ですが、印鑑は、最終的な意思表示をしたという覚悟を示すものでもあります。法律的な問題ではなく、面倒な事をしてでも契約するという、押す側の覚悟が現れる仕組みといえるでしょう。