ハンコ文化と日本人・印鑑まめ知識

契約と印鑑の法的関係

 実印を使い、印鑑証明を提出して行って契約した場合と、実印以外の印鑑を使っての契約。この二つにはどのくらい差があるのでしょうか。実印を必要とする契約は、不動産や車などの高額な動産の売買などで使われることが多いですよね。そのため、法的には実印を使った契約のほうが重いものという印象かもしれません。
 ですが、法的な効果は実印であってもなくても同じものです。それどころか、署名だけでも契約書としては有効になるのです。契約というのは、本来双方が納得した上であれば口約束であっても有効になります。ですから契約書を交わす際に、印鑑が必ずしも必要とはされないことになります。印鑑を求められるときというのは、契約者の双方が、お互いに同意したという儀式ともいえます。
 では、どんな契約であっても有効にあるのかというと、もちろんそうでもありません。きちんと実印で契約書を取り交わしても、違法な契約は無効となります。例えば契約によって、片方が極端に不利になるような契約であれば、法的に無効とされます。分かりやすい例でいえば、違法な金利で貸付した場合、たとえ実印を押しても違法な金利を返す必要はありません。
 また、契約内容が、片方にとって極端に不利であれば、その契約は無効になります。一部のクーリングオフ制度がある契約は、消費者側、つまり購入者側が専門業者に対して知識が乏しく、騙されてしまうこともあるために設けられているものです。こちらも仮に実印を押しても、期間内なら契約は破棄することが可能です。ですが、クーリングオフが法的に求められている契約なのに、契約書にクールングオフはできませんと書かれていたとします。ですが、たとえ署名捺印していても、その条文は無効となるのです。
 なぜ実印が求められるのかといえば、それは実印の証拠能力に尽きます。実印を押す場合は、印鑑証明書も求められます。お役所から本人の印鑑だという証明をもらうのですから、契約する気はなかったと実証するのは難しくなります。印鑑登録は本人にしかできないことです。ですから、この契約は十分に双方が納得した上での契約だという証拠になりうるのです。